レトロスペクト・アメリカ


Vol. 29 フリーランサー」 の巻


「フリーランサー」と言うのは、聞こえは良いけどハッキリ言って、仕事が来た時にしかお金儲けが出来ない人の事よね。私はこれを専門学校生の頃から4年間、働いている時も学生の時もやっていましたが、とにかく中々、数をこなさないと儲からない...そんな訳で、副業としてフリーランス・カメラマンをやってる分には殆ど支障は無いのですが、これを本業とするにはかなりの根性が必要です。

スタジオを辞めた私は、言ってみれば「フリーランサー」。カッコイイっっ!? ほんと、勤めてる時に貯金してて良かったですよ(笑)。 スタジオを構えてるならともかく、フリーランスって本当にコネが多くないと出来ないんですよね。コネと根気と根性の仕事です。

AIPは、就職の斡旋もしていますが、それよりもフリーランスの仕事の方を多く受けています。と言うのも、依頼する方が「学生ならプロに頼むよりも安くやってくれるだろう」という頭があるからです。そんな訳で、AIPに行けばフリーランスは必ず1〜2件はあり、わざわざ足を運ばなくても電話で知らせてくれる時もあります。でもね、やっぱりギャラが安い。でも、フリーランスでも面接と言うのはあるので、面接の際に仕事の内容・量・相手の懐具合を見て自分の定時する報酬を決める事は可能です。大体は交渉の末、こちらの言い分とあちらの言い分の真ん中辺りを取るんですけどね。

報酬の具合は、自分の腕(技術)にもかかって来るので、面接に行く時は必ず作品を抱えて行きます。それも、全て持っていけば良いと言う訳ではありません。自分の作品の中でも、相手が求めているモノに類するモノを抜粋して持参するのです。だからね、ホント仕事を選んでなんかいられません。

フリーランスの仕事で一番多いのは何と言ってもポートレートでしょう。ポートレートと言っても色々あって、『モデリング』の回で書いたシニア・ピクチャーありの、家族写真ありの、赤ちゃん写真ありの、とまぁ、結構多種類のモノが有ります。その中でも結婚式は金額的には最たるものですが、大抵の人は結婚式のカメラマンと言うのは半年〜1年前からプロを予約しているので、AIP等に頼んで来る人と言うのは、余程カメラマンが捕まらずに切羽詰っているか、予算が全然無いかのどちらかです。しかも結婚式と言うのは重労働である上にエネルギー(体力・精神力共に)をかなり消費する仕事で、その上それなりのテクニックが必要なのですね。ま、結婚式は次の仕事場でかなりこなしましたので、その話はまた別の回に。

フリーランスで、ポートレートの仕事は家族写真とシニア・ピクチャーが主なものでした。そう大した金額にはなりませんが、数をこなせば悪い仕事ではありません。しかも、機材は学校のモノを使えば良いのですから。AIPはカラーも焼く事が出来るので、プリントも全て自分でやれるので、プリント技術さえシッカリしていればかなりのコスト削減で、自分の取分は多くなります。

AIPを通じてのフリーランスを上手くやるコツは、先生達と仲良くして、彼等のLABの授業中にもプリントをする為に入り込ませてもらえたり、スタジオを使用出来る様にしてもらう事です。これを上手くやらないと、スペースもLABもそして機材迄も全て自分で揃えてやらなくてはならなくなるので、儲けの割に合わない莫大な費用がかかってしまう事になります。 私のやったフリーランスの中でもメジャーな物は、ピッツバーグ・アート・センターのカタログ用撮影と、ハインツの社内報用の撮影ですね。アート・センターの方は、責任者とお友達だったので結構お仕事を回してもらいましたが、ハインツの方は学校の紹介。広告代理店の人に気に入られての採用でした。

ご存知の通り、ハインツとはあのケチャップのハインツです。あの会社はピッツバーグに本社が有るんですね。ダウンタウンからアレゲニー川を挟んで向かい側に位置し、ダウンタウンにも時々ケチャップの香りが漂って来ますが、仕事でハインツの駐車場に入ったとたん、辺りはすっぱいケチャップの香りに包まれます。別に仕事的には工場の中の写真を撮る訳でもなく、社内報の企画に合せた写真なので、トピックに上がった社員を職場で撮影するのがメイン。でも、スーパーや美術館などでのロケなどもあり、経費は全て代理店持ちと言う、結構楽しく美味しい仕事でしたよねぇ。オマケニその社内報も、作品として頂く事が出来、ハインツの様な大きな会社で仕事をする事が出来るのも、フリーランスの大きな醍醐味かもしれませんね。一つ注文が付けられれば、報酬がもうちょっと良かったら「アシスタントを雇って、重い機材を一人で全て運ばなくても良かったのに」って事位でしょうねぇ(笑)。



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