アメリカでは(どこの国でも?)外国人の就労は、基本的には禁止されています。永住権(グリーンカード)や就労ビザを持っている人はともかく、学生ビザや観光ビザなどのビザ保有者は原則では働いてお金を稼いではいけないのです。しか〜し、どこにでも例外はあるのです。このバイトの件に関してもしかり。外国人の学生は、移民局に申請して許可を得れば週に20時間以内であればバイトも可能ですし、自分の通う学校内であれば許可無しでも、同じく週20時間以内ならばバイトをしていいのです。
大抵の日本人の学生は、日本で他県の大学に通う大学生よりも充分な仕送りをしてもらっているんですね。「遠い外国で一人頑張っている我が子の為に」と言う親心でしょうか...?しかし、これはアメリカの学生にはとても考えられない事です。彼等は自分で学費と生活費を賄える程度の奨学金または学生ローンを工面するんですから。そんな訳で、他にアルバイトをしていた日本人と言うのは意外と少なく、私の知っているのは10人以下です。年齢が上がるに連れてバイト人口も増えるように感じますが。自分の責任が増えるからでしょうか? とにかく、私の最初のバイトは学校内で始まりました。AIPの写真科には俗に『ケージ』(鳥かごの様に小さなスペースから)と呼ばれる機材貸出カウンターがありますが、そこが私の数少ないアメリカ生活をする上の知恵ではAIP内で唯一私が働けるであろう場所でした。給料はMinimum Wage(最低賃金)です。私は3学期の中頃『ケージ』を仕切るウェインと言う先生に「空きはないか」と尋ねますが、その時点では人数がイッパイで私は2週間程返事を待つ事になります。 VOL.16で私が日本に一時帰国する2週間ほど前、私は喫煙ルームと化しているディレクターのオフィスからウェインに呼び止められます。「ポジションが空いたけど、仕事欲しい?」と。そりゃぁアンタ、欲しいから聞いてるんでしょうが。そんな訳で、私は数少ないLAB Tech(ケージで働く人はこう呼ばれていました。)の座を獲得したのです。 年が明けて4学期。私は以前から働いているLAB Techに色々教えてもらいながら仕事を始めます。最初の頃は慣れなくて大変でしたが、慣れて来るとトッテモ楽な仕事なのですねぇ。基本的には機材の貸出。AIPが発行している学生証を預かって、名前を記入し、個人個人で責任を持って機材を使ってもらう。後は白黒とカラーのプリント・プロセッサー(トレー現像をしなくても良い機械)の掃除とメンテ、学期末毎の棚卸しと大掃除等です。大掃除はシンク磨きから引き伸ばし機等のホコリ払い等々。結構な重労働です。生徒の皆が休みに入って4日間は掃除三昧ですから。シフトは基本的に朝の7時〜9時半、9時半〜11時半、11時半〜12時半(ランチ)、午後の12時半〜4時半、4時半〜7時の5つで、ウェインが生徒皆の授業スケジュールを見ながら授業の無い時間にシフトを入れます。2シフト続きや丸一日と言う場合もあります。 私は大体朝一かラストのシフトが多かった。ま、クラス次第だし、LAB Tech同士で忙しい時はお互いに代わったりも出来ましたから。しかし、車の無かった頃の7時出勤は辛いものがあります。バスの本数がさすがにその時間だと少ないので、朝6時頃のバスに乗るんですよねぇ。夏はまだしも、冬の寒い事ったら...真っ暗の中を出勤し、クラスや宿題で残れば又真っ暗な中を帰る。なんだかなぁ。 朝と夜のシフトに人は、下準備や掃除など、結構余分な仕事もありますが、その他の時間は基本的に勤務時間の半分は椅子に座っていられます。クラスのある時間は、LAB(現像やプリントの暗室を使うクラス)がある時以外はクラスの始めと終わりに忙しい位で、暇な時は私などリクライニング出来る椅子にもたれてカウンターに両足あげて、好きなテープをかけながらグーグー寝てましたからねぇ。機材を借りに来た生徒に足をつついて起こされてましたもん。ま、誰も来ないほど暇な時は寝たりしてましたが、大抵は友達や、暇をもてあましている生徒、質問のある生徒がケージの周りにウロウロしてました。だから大抵は退屈しないバイトですね。 私はこのバイト、仕事を頂いてから卒業するまで、勤続5学期でした。私が東洋人で名前も珍しいとあって、生徒の方も私が知らなくても向こうは名前を知っていたりして、ホント、友達増えますよ。実はパーティーの張り紙もここでしてたんですねぇ。後は仲の良い先生の教室。あまり廊下にデカデカと貼ると校長に文句言われましたから。特にパーティー関連は。 そんな訳で、何だか知らないけど人気者になってしまったワタシ、学期が上になるにつれて知識が増えるのは必然で、ケージに来る困った生徒のチューターもしてました。チューターと言って辞書でTutorを引くと『家庭教師』と出てますが、チューターは家でなくても、分かる人が分からない人に理解する手助けをする事です。人に教えると自分も更に理解を深められる事知ってました? と言う事で、私自身にとって、金銭的にも学業的にも役に立ったケージでのバイトでした。 |