レトロスペクト・アメリカ


Vol. 08 モデリング」 の巻


別にファッションモデルになった訳ではありません。いくら自信過剰のわたしでも、そこまで己惚れてはいませんから(笑)。

アメリカの学校では、毎年一人一人の写真を撮影します。これも一故にイヤーブックの為。イヤーブックと言うのは、以前にも説明した事があるかと思いますが、日本の卒業アルバムの様なもので、しかし3学年全員が載っていて、全ての人が購入可能という代物です。

このイヤーブックの写真、高校2年生までは学校と契約している写真館のカメラマンが学校にきて撮ってくれるのですが、3年生となるとそうは行きません。なにせ『シニア』ですから。それ故に、この高校3年生で撮影する写真を『シニア・ピクチャー』もしくは『グラジュエーション・ピクチャー』と呼び、親たちは子供の素晴らしい姿を残すのに躍起になってお金をかけるのであります。

そもそもはイヤーブックに載せる為だけの写真なので、「大した写真で無くてもよかろう」と思われがちですが、何の何の。皆さん化粧バリバリ、ポーズバリバリの、本当にナリキリ野郎になってフレームに収まっています。そもそもアメリカ人と言うのは家族写真が大好きで、家中、会社のデスク中に家族の写真が散りばめられています。そんな訳で、子供が義務教育を終えるとなると大騒ぎです。

私はそんな習慣は何一つ知らずに渡米したので、カフェテリアなどで友人がポーズバリバリの写真を見せ合いっこしている光景に出くわし、「何だあれは? あんな奴でもモデルが出来るのか?」などと不信に思っていた矢先でした。

母S曰く「PiggyBabesもそろそろシニア・ピクチャーを撮りに行かなきゃねぇ」これは困った。何の話なんだっ!!と言う事で、母に質問をぶつけたところ、上の様な説明が帰って来た訳です。そこで早速、母が写真館に予約を入れ、1週間後...一応は化粧などもして小奇麗な格好をした私が写真館にいました。服を何度も着替えさせられ、ポーズを付けられ、カメラマンは大ハリキリ。今でこそ写真学校と写真館勤務を経て、散々モデルをやらされて来た結果で写真慣れしている私ですが、当時は全くの日本人。写真を撮られ慣れていない私の笑顔はとっても引きつった物でした。

更に一週間後、出来上がって来た写真を見て一言。「何じゃこりゃ?」しかし、父W、母S、そして両方の祖父母とも何故か大喜びで、大きく引き伸ばされた私の写真を部屋に飾り、名刺サイズの写真を財布に入れて持ち歩く始末。どうしてだぁ〜っ!!

とにかく、この名刺サイズの写真というのは、3年生同士で裏にメッセージを書いて交換するのにも使うんですねぇ。写真付き名刺の様なものです。なにか、写真をもらったか、もらわなかったかで交友関係の深さが測られるような、何処かしらシビアな習慣に感じられました。

と言う訳で、私のこの引きつった笑顔のキャビネ版は、未だにF家のリビングルームに飾ってあります。他の交換留学生達の写真に囲まれて....

この年、何も知らずに望んだシニア・ピクチャーでしたが、その3年後には私自身が写真館+フリーでカメラの後ろに回っているとは誰が想像した事でしょう。自分で言うのも何ですが、今となってはポーズさせるのも笑わせるのも、そして写真で良い顔をするのもプロフェッショナルです(笑)。

さて、次回はとうとう高校生活の最後、卒業式です。私はさて、本当に無事卒業出来るのでしょうか...?



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